2005年 07月 06日
駐在員の典型的な一日 |
久しぶりに一日オフィスにいることができたので、日々どんなことが仕事としてあるのかをご紹介します。
1.社内稟議書の作成
もっとも面倒な仕事。これさえなければどれだけ仕事が効率的になるものか、と、恨みさえ覚える存在。入社以来、紙に非常にうるさい部署に配属されたおかげで、漸く一般人並に文章を書くことには慣れていたつもりだったんだけど、こちらにきたら、よくよく考えるとそんなに座って文章を練っている時間がないのが現場だ、ってことに気付かされましたね。そりゃそうですよね、座っている間にもどんどん関係者が動き、意思決定をし、物事は進んでいるわけですから。でも、この仕事の重要性はなんとなく理解しています。つまり、
①大企業に身を置く以上、ひとつの意思決定に対し複数の人間のコンセンサスが必要となるわけで、そのために関係者が一同に集まる訳はなく、紙を回すことを以ってこれを代替するため。
②日々、事実関係は時間とともに曲がっていくわけです。従って、意思決定時の判断基準、当時の理解を正確に記録しておくことは、組織として事業を継続していく以上不可欠。社内の貴重なAssetにもなっていくわけです。
というわけで、結果として赤いはんこが大量に押された紙が大量に会社のキャビネットに積み上がっていくわけです。Negativeに捉えれば、まさに大企業病の一端を見ることが出来ます。
2.連結月次資料のまとめ
当然乍、株主にはPerformanceを定期的に報告する必要があります。面倒なことにこの会社には子会社やら関係会社やらがわんさとあり、しかも増え続けている状況でフォローが大変。まして相手はフィリピンの農民だったりするわけで、タイムリーに正確な財務諸表が出てくるわけもなく、ひとつの頭痛の種です。とはいえ、Routineの最たるものであり、早々に財務諸表のみならず関連する様々な数字を一枚の紙に落としこむテンプレートを作ってしまいたいと。ついつい後回しになりがちな作業。
3.新規投資案件の事業性評価
これも行き着くところは1.の書類って訳ですが、とりあえずその過程の仕事がわんさかあるわけです。つまり、紙にし得る状態とするためには、しっかりとした事業計画がMUSTですから、それを作りこむまでが大変なわけです。特に農園の会計となると一筋縄ではいきません。前提条件は日々変わりますので、これをどこで見切るかというのがひとつのポイント。今回は、新しい果物を始めようってんで、計画の前提をいじってSensitivity analysisしてみたり、それ以前にそもそものfundingに係るフィリピンの外資規制を今更再確認したり、ってな感じの仕事を少々してみました。
4.決算処理に係る監査法人とのやりとり
3月決算だったのに、未だに監査作業をやっている某監査法人にはいい加減切れそうです。Big4ってこんな感じなんでしょうか、対応も信じられないほど遅いし、やっぱり中小企業はなめられるんだなぁということを実感。この苦労が、大企業の本社や各国の支店には、どうも判らないらしいです。何しろ、彼らも馬鹿ではないので影響力ある本社・支店にはしっかりと対応しているそうです。というわけで、早々に本社にはクレーム要請及び来期以降は監査法人を変更したい、と御願いの日々。大体なんでそんなことを本社にお願いする必要があるのか、なんて思われる普通の方も多いと思いますが、不思議なことにこういう外部リソースの使い方に暗黙の一定のルールがあったりするんですよね、大企業って。つまり、グループとしての評判を落とさないためのルールというか、大義名分上は効率的にアウトソースすること、が目的だそうですが、その論理から行くと全世界的に一社に御願いすることが望ましい、って言うんです。各国の台所事情は一切お構いなく、ここと仲良くしよう、という宣言ですね。ひどいもんです。
5.新規投資案件の契約書読み込み
こういう面倒で、且つ、後々まで尾を引く類の仕事ってのはある日突然やってくるもんです。ぽろっとメールで送られて来て、明日話したいから読んどいて、って。中国での話ですが、大体中国案件に於いて(アジア全体そうかもしれません)ストラクチャーを考慮する際の要素って、
①税金 ②政府許認可 ③時間 って感じでお決まりなんです。しかも、どれも絶対に白くも黒くもならないんです。①については、時々、というか、頻繁に真っ黒なケースが多いですけど。ついでに②についても、大体中国の方は、『モーマンタイ(無問題)』とか仰って頂けるんですけど、調べれば調べるほど、それって外資は取れないじゃん、見たいな話。WTO加盟で結構色々と開放されているはずなんですけどね、実務を追ってる中央政府の商務省とか、人手不足らしいです。以前、日本の中国大使館に行って話しを聞いたところ、そう言ってましたね。具体的に何人しかいなくて、その人達の机の上に紙がたまっちゃっててどうしようもないんだって。だから法整備はできていても、実際に投資を評価されて認可を得るまでには相当時間がかかるって。で、気の短い人達には馴染まないわけです。すると何をするかというと、無理やり契約とかで縛り付けて中国に入っていこうとするわけです。
よく言われることですが、『進むも地獄、進まぬも地獄』ってのは、まさに中国市場ですよね。行くには相当のリスクを覚悟せざるを得ないけど、行かないことのリスクはそれより遥かにでかい。
6.出張時にかかった経費の精算
東京の本社にいるとシステム上でちゃっちゃとやって、お姉さんに『はいっ』と渡せば終了の事務が、こちらだと紙をすり出し、自分で手書き記入し、計算もし、あれもこれもって感じなわけです。何しろまだシステムが事実上無いに等しいですから。
7.送金実務
週2回大きな送金手続きが必要なんです。ポイントは、送金ではなくて銀行の取引実行画面へのログイン時のIDとパスワード。覚えられませんね、これだけあれやこれやパスワードが出てくると。危うく、銀行のシステムに入れなくなるところでした。
8.コミュニケーション with staff
もっとも大事な仕事です。特に最近参加してきたDさんの動向が気になりました。気が強くないタイプなこともあって、前回の問題もあり一応もう少しいてもらいたいなぁ、と思ってます。どうやら僕の英語が聞き取りづらいそうです。友人のTが話してくれました。そろそろ色々と語学の勉強をはじめないとな、なんて思わされました。とにかく、コミュニケーションが無いことには、仕事以前の問題なわけで、その意味でも僕は常々Openだよ、と意味不明に不特定多数に連絡したりしています。年齢、国も性別も違う一人の個人を理解するのは、当たり前ながら簡単ではないし、ここに全力投球せずに次の一手に出られるわけでもありません。彼女たちが僕の仕事を最終的にやってくれているわけですから、恩返しして当たり前です。
って感じで一日がすぎていくわけです。で、出張スケジュールのアレンジが始まったり、次の出張時の飛行機どうする、ってことがあったり、今回の出張者の晩飯はどこがいい?なんてことまであるわけです。だから、ブログでもやってないとだめになるわけです。
1.社内稟議書の作成
もっとも面倒な仕事。これさえなければどれだけ仕事が効率的になるものか、と、恨みさえ覚える存在。入社以来、紙に非常にうるさい部署に配属されたおかげで、漸く一般人並に文章を書くことには慣れていたつもりだったんだけど、こちらにきたら、よくよく考えるとそんなに座って文章を練っている時間がないのが現場だ、ってことに気付かされましたね。そりゃそうですよね、座っている間にもどんどん関係者が動き、意思決定をし、物事は進んでいるわけですから。でも、この仕事の重要性はなんとなく理解しています。つまり、
①大企業に身を置く以上、ひとつの意思決定に対し複数の人間のコンセンサスが必要となるわけで、そのために関係者が一同に集まる訳はなく、紙を回すことを以ってこれを代替するため。
②日々、事実関係は時間とともに曲がっていくわけです。従って、意思決定時の判断基準、当時の理解を正確に記録しておくことは、組織として事業を継続していく以上不可欠。社内の貴重なAssetにもなっていくわけです。
というわけで、結果として赤いはんこが大量に押された紙が大量に会社のキャビネットに積み上がっていくわけです。Negativeに捉えれば、まさに大企業病の一端を見ることが出来ます。
2.連結月次資料のまとめ
当然乍、株主にはPerformanceを定期的に報告する必要があります。面倒なことにこの会社には子会社やら関係会社やらがわんさとあり、しかも増え続けている状況でフォローが大変。まして相手はフィリピンの農民だったりするわけで、タイムリーに正確な財務諸表が出てくるわけもなく、ひとつの頭痛の種です。とはいえ、Routineの最たるものであり、早々に財務諸表のみならず関連する様々な数字を一枚の紙に落としこむテンプレートを作ってしまいたいと。ついつい後回しになりがちな作業。
3.新規投資案件の事業性評価
これも行き着くところは1.の書類って訳ですが、とりあえずその過程の仕事がわんさかあるわけです。つまり、紙にし得る状態とするためには、しっかりとした事業計画がMUSTですから、それを作りこむまでが大変なわけです。特に農園の会計となると一筋縄ではいきません。前提条件は日々変わりますので、これをどこで見切るかというのがひとつのポイント。今回は、新しい果物を始めようってんで、計画の前提をいじってSensitivity analysisしてみたり、それ以前にそもそものfundingに係るフィリピンの外資規制を今更再確認したり、ってな感じの仕事を少々してみました。
4.決算処理に係る監査法人とのやりとり
3月決算だったのに、未だに監査作業をやっている某監査法人にはいい加減切れそうです。Big4ってこんな感じなんでしょうか、対応も信じられないほど遅いし、やっぱり中小企業はなめられるんだなぁということを実感。この苦労が、大企業の本社や各国の支店には、どうも判らないらしいです。何しろ、彼らも馬鹿ではないので影響力ある本社・支店にはしっかりと対応しているそうです。というわけで、早々に本社にはクレーム要請及び来期以降は監査法人を変更したい、と御願いの日々。大体なんでそんなことを本社にお願いする必要があるのか、なんて思われる普通の方も多いと思いますが、不思議なことにこういう外部リソースの使い方に暗黙の一定のルールがあったりするんですよね、大企業って。つまり、グループとしての評判を落とさないためのルールというか、大義名分上は効率的にアウトソースすること、が目的だそうですが、その論理から行くと全世界的に一社に御願いすることが望ましい、って言うんです。各国の台所事情は一切お構いなく、ここと仲良くしよう、という宣言ですね。ひどいもんです。
5.新規投資案件の契約書読み込み
こういう面倒で、且つ、後々まで尾を引く類の仕事ってのはある日突然やってくるもんです。ぽろっとメールで送られて来て、明日話したいから読んどいて、って。中国での話ですが、大体中国案件に於いて(アジア全体そうかもしれません)ストラクチャーを考慮する際の要素って、
①税金 ②政府許認可 ③時間 って感じでお決まりなんです。しかも、どれも絶対に白くも黒くもならないんです。①については、時々、というか、頻繁に真っ黒なケースが多いですけど。ついでに②についても、大体中国の方は、『モーマンタイ(無問題)』とか仰って頂けるんですけど、調べれば調べるほど、それって外資は取れないじゃん、見たいな話。WTO加盟で結構色々と開放されているはずなんですけどね、実務を追ってる中央政府の商務省とか、人手不足らしいです。以前、日本の中国大使館に行って話しを聞いたところ、そう言ってましたね。具体的に何人しかいなくて、その人達の机の上に紙がたまっちゃっててどうしようもないんだって。だから法整備はできていても、実際に投資を評価されて認可を得るまでには相当時間がかかるって。で、気の短い人達には馴染まないわけです。すると何をするかというと、無理やり契約とかで縛り付けて中国に入っていこうとするわけです。
よく言われることですが、『進むも地獄、進まぬも地獄』ってのは、まさに中国市場ですよね。行くには相当のリスクを覚悟せざるを得ないけど、行かないことのリスクはそれより遥かにでかい。
6.出張時にかかった経費の精算
東京の本社にいるとシステム上でちゃっちゃとやって、お姉さんに『はいっ』と渡せば終了の事務が、こちらだと紙をすり出し、自分で手書き記入し、計算もし、あれもこれもって感じなわけです。何しろまだシステムが事実上無いに等しいですから。
7.送金実務
週2回大きな送金手続きが必要なんです。ポイントは、送金ではなくて銀行の取引実行画面へのログイン時のIDとパスワード。覚えられませんね、これだけあれやこれやパスワードが出てくると。危うく、銀行のシステムに入れなくなるところでした。
8.コミュニケーション with staff
もっとも大事な仕事です。特に最近参加してきたDさんの動向が気になりました。気が強くないタイプなこともあって、前回の問題もあり一応もう少しいてもらいたいなぁ、と思ってます。どうやら僕の英語が聞き取りづらいそうです。友人のTが話してくれました。そろそろ色々と語学の勉強をはじめないとな、なんて思わされました。とにかく、コミュニケーションが無いことには、仕事以前の問題なわけで、その意味でも僕は常々Openだよ、と意味不明に不特定多数に連絡したりしています。年齢、国も性別も違う一人の個人を理解するのは、当たり前ながら簡単ではないし、ここに全力投球せずに次の一手に出られるわけでもありません。彼女たちが僕の仕事を最終的にやってくれているわけですから、恩返しして当たり前です。
って感じで一日がすぎていくわけです。で、出張スケジュールのアレンジが始まったり、次の出張時の飛行機どうする、ってことがあったり、今回の出張者の晩飯はどこがいい?なんてことまであるわけです。だから、ブログでもやってないとだめになるわけです。
by Tomoya_Yasuda
| 2005-07-06 02:50
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